相続にかかる時間や労力、費用など負担の軽減に遺言書の作成が効果を発揮する場合があります。
通常の相続手続きは、相続が開始してから相続人の全員による遺産分割協議を得た上で不動産や預金、株式など遺産の処分を行いますが、遺産分割協議書は原則として、相続人全員が実印を押印(及び印鑑証明書の添付)をしなければなりません。
相続人のうち一人でも遺産分割の内容に納得ができず、実印を押してくれない場合や後見人がいる場合などは最悪の場合、調停や審判といった家庭裁判所での手続きになります。相続人のうち一人に弁護士など代理人が付いた場合は手続きがスムーズに進まない可能性が高くなります。
そこで遺言書を作成しておき、あらかじめ遺産分割の方法などを指定しておくことで無用な争いを防止し、スムーズな相続手続きを実現できる場合があります。
ここでは様々な家族関係から特に遺言書の作成が望ましいと考えられる例をご説明します。ご自身が遺言書の作成をするべきか否かお悩みの方は専門家のサポートが有効です。神戸の行政書士かがみ事務所までご相談ください。
以下の方々は、民法の規定で相続の手続きが複雑になる可能性があります。当事務所では相続人の範囲の確認をした上で遺言書の作成をお勧めしております。
配偶者もお子様もおられない方は、ご自身の遺産は親、親がいない場合は兄弟へと引き継がれます。また兄弟の中にすでに亡くなっている方がいる場合には、兄弟の子(甥や姪)が相続人になります。
兄弟同士や甥や姪といったお互い疎遠になった方々が共同の相続人となり、全員が実印を押して遺産分割協議書を作成するのは、相続人にとってかなりの負担が掛かりることは想像するに難くありません。住んでいる地域が遠方であったり、相続人のうち一人が高齢で後見人が付いている場合などは相続手続きが進まない典型的なケースです。
この場合、公正証書で遺言書を作成していれば、あらかじめ相続人や遺言執行者を指定することが可能になり、相続手続きが大変スムーズになります。
配偶者の一方が亡くなった場合、わが国では妻または夫が遺産の全て引き継ぐというルールにはなっておりません。お子様がいる場合は配偶者と子が共同相続人になりますが、子がいない場合は亡くなった方の親や兄弟が一定の割合で相続人になります(この場合、遺産は共有ということになります)。
遺産分割協議に兄弟や親が参加されると協議がまとまらず最悪の場合、調停や審判など裁判所での手続きになります。相手方に弁護士など代理人が付くと厄介なことになります。遺産を全て配偶者に引き継ぎたいとお考えの方は遺言で兄弟を相続人から排除しておくことが得策です。
遺産分割協議書は相続人全員が実印を押して作成しますが、連絡の取れない相続人がいる場合はそもそも遺産分割協議ができないので、最悪の場合、預貯金の引出しや株式や不動産の名義変更ができない事態も考えられます。また、相続人になる者の中に成年被後見人がいる場合も後見人が遺産分割協議に代理して参加するので手続きがスムーズに進まないことがよくあります。
遺産分割協議を回避する遺言書の作成によって、相続手続きをよりスムーズにし、遺族の負担を軽くすることが可能になります。
お子さまのうち、連絡を取れない人がいる、もしくは子供はおらず、兄弟の中に連絡を取ることができない人がいるといった場合には遺言書作成をご検討されてみてはいかがでしょうか。
相続人がいない方が亡くなった場合、遺産は国に帰属することになります(特別縁故者がいる場合を除く)。
遺言によって、遺産を特定の方に遺贈することが可能になりますので、内縁の配偶者や生前、特に親しくされていた方に遺贈したいとお考えの方は遺言書の作成をお勧めします。
息子の妻は親戚であっても相続人ではありません。したがって生前に介護を良くしてもらったので遺産の一部を承継させたいとお考えであれば、遺言書で明記しておく必要があります。
内縁の妻や夫は法律に基づかない事実上の配偶者であり、相続人ではありません。そこで、遺産を承継させたいとお考えであれば、遺言によって遺贈しておく必要があります。